令和7年度 深川市民公開講座(第5回)が開催されました。(11月1日)
「学びをあきらめない社会へ‐不登校・夜間中学・成人の学びから地域の未来を考える‐」
日時:11月1日(土)10:00~11:30
会場:拓殖大学北海道短期大学101教室
参加者:約30名
【講演内容と当日の様子】
本講座では、教育学の理論的背景と長年の実践活動という両輪からの講演が行われました。
1. 横関 理恵 准教授 講演:「学び直しは誰のため? 地域でつくる『いつでも、どこでも』学べる社会へ」
横関准教授より、日本の公教育制度が抱える「学びの壁」と、すべての人に学びの機会を保障する社会のあり方について、以下の点が示されました。
● 構造的な課題: 日本の公教育制度が「年齢主義」を基本原理としてきたため、この構造が、不登校の子どもや学齢を超えた人々への「基礎教育の保障」を弱くしていると指摘されました。
● 義務教育未修了者の実態: 2020年国勢調査のデータに基づき、北海道が未修了者数全国最多であり、課題が特定の地域に空間的に集中していることを明らかにされました。
● 目指すべき方向性: 「平等な配慮と尊重」(多様性に応じた対応)に基づく新たな制度が必要であり、年齢や国籍にかかわらず誰もが身につけるべき教育ミニマムを「基礎教育」として定義し直し、機会を保障すべきだと提言されました。
2. 工藤 慶一 氏 講演:「学ぶことは生きることの証~札幌遠友塾のあゆみとこれから」
工藤氏からは、35年にわたる札幌遠友塾自主夜間中学の歴史と、公立夜間中学設置に向けた尽力について、詳細な報告がありました。北海道における義務教育未修了者数の多さの背景、公立夜間中学の設置に至るまでの法整備への働きかけ、そして公立の星友館中学開校後も「教育の原点」を発信し続ける自主夜間中学の役割と、両者の「協働」の重要性について熱意をもって語られました。
また、基礎教育保障学会ホームページに掲載されている2020年国勢調査にみる義務教育未修了者のデーターベースのストレーションが行われました。
【あなたのまちにも学びを求めている人がいます~2020年国勢調査にみる義務教育未修了者】以下からアクセスできますので、是非、御覧ください。
→このプロジェクトについて | 2020年国勢調査にみる義務教育未修了者
質疑応答・まとめ
質疑応答では、北海道における義務教育未修了者の存在、映画『新渡戸の夢~学ぶことは生きることの証』予告を視聴した感想、市民でつくる自主夜間中学の役割に関する議論が活発に行われました。
参加者からは、「戦後の引揚者の方々など北海道が抱える学べなかった人々の実態を深く理解できた」「戦後の在留邦人を巡る帰国支援制度において国籍に関わる課題が今もある」と参加者からの発言があり、教育を受けられなかった人々への教育機会の保障は歴史的・社会的にも重要なテーマであることが確認され、「公立と自主夜間中学の連携が地域に大きな希望を与えていると感じた」といった感想も寄せられ、学びの機会の保障に対する関心の高さが改めてうかがえました。
本講座は、教育学の理論と長年の実践活動という両輪からの講演により、参加者一同、「全ての人に学びの機会を保障すること」が、個人の尊厳の回復だけでなく、地域社会全体の未来を形作るためにいかに重要であるかを改めて深く考える貴重な機会となりました。


今年度の深川市民公開講座全5回を無事終了することができました。
多くの市民の皆さまにご参加いただきありがとうございました。
次年度(令和8年度)も開催する予定です。詳細が決まりましたら、本学ホームページでもお知らせいたします。
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