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令和2年度 ご入学に当たって 学長告辞 | 拓殖大学北海道短期大学

令和2年度 ご入学に当たって 学長告辞

令和2年度 ご入学に当たって 学長告辞

学長 篠 塚  徹

 ここ北海道深川市にも待望の春がめぐってまいりましたが、この良き日に拓殖大学北海道短期大学に入学された新入生の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。私たち教職員一同は、皆さんのご入学を心から歓迎し、お祝いいたします。また、これまで新入生を慈しみ長く育ててこられたご両親や保護者の方々に敬意を表するとともに、入学の喜びを分かち合いたいと思います。なお、拓殖大学国際学部農業総合コース履修生の皆さん、本学は農業を共に学ぶ学生として皆さんを心から歓迎いたします。

 本学は、新型コロナウィルス感染症が世界規模で流行し、本国においても収束の見通しが立っていないことを考慮し、入学式をやむをえず中止いたしました。また、授業の開始時期やそれに伴う関連の日程も、遅らせることといたしました。新入生の健康と安全を最優先に考えた措置とはいえ、このような事態に至ったことにつきましては、新入生ならびに保護者の皆様のご理解を心からお願い申し上げます。

 新入生の皆さん、あなた方が入学された拓殖大学北海道短期大学は、今から54年前の1966年に創立されました。顧みますと、本学はこの実り豊かな美しい北の大地北海道深川市に居を定め、半世紀を超えて「すべての学生に成長と感動を」を教育の原点として、激動する内外の社会状況に対応しながら倦まず弛まず誠実に歩みを進めてまいりました。その間、あまたの卒業生を世に送り出し、先輩の方々は多様な分野で立派に活躍をしておられます。

 皆さんは今日からこの魅力に満ちた大学の一員ですが、大いなる期待と希望に溢れた現在の気持ちが報われるように存分に大学生活を満喫してください。豊かな自然に囲まれた広いキャンパスには、充実した教育施設、学生ホール、実習農場、スポーツ施設などが整えられており、皆さんが伸び伸びと持てる能力を十分に発揮できる環境が用意されています。私たち教職員はあなた方ができるだけ早く大学生活に慣れるように全力を挙げてお手伝いしますが、勉学を本分とする自覚をもちつつも、多くの友人を得て大学生活の幅を広げ、かけがえのない青春時代を大いに謳歌してください。

 志を抱き波濤を越えて海外から入学された留学生の皆さん。心から歓迎いたします。遠く母国を離れて文化、風俗習慣、気候風土の異なる土地で勉学に勤しみ、生活をされるのですから、当初は何かと戸惑い慣れないことが多いと思いますが、日本人学生や土地の人々との交流や日々の生活体験を通じて、必ずや意義深い学生生活を送ることができるようになります。また、多くの困難を乗り越えて社会人入学を果たされた皆さん、あなた方の勉学への強い意欲に敬意を表します。若い学生たちとともに学び実習に励むことによって学生生活を取り戻し、今後の多様な生き方の糧を得ることを望みます。

 北海道南西沖地震、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本大地震、北海道胆振東部地震など、日本列島は絶え間なく大地震に見舞われています。また、昨年関東甲信越地方・東北地方を襲った台風19号など、毎年全国各地において甚大な豪雨被害が多数発生しています。改めて亡くなられた多くの尊い御霊のご冥福をお祈り申し上げるとともに、今なお傷跡の残る被災地の一日も早い復興と発展をお祈り申し上げます。およそ地球に居住する人類は自然災害から逃れることはできませんが、その他ならぬ自然から多くの恩恵を受けていることにも思いをいたし、人類の英知をもって自然との共生を図り、自然と謙虚に向き合うことによって被災を予防し、被害の程度をできるだけ軽減することが必要です。実際に、甘い災害想定や災害発生後の対応の拙さから被害の程度を大きくする人災の様相を帯びることも少なくありません。新入生の皆さんは、本学で学ぶことによって防災意識を高め、地球環境への理解を進め、生態系を維持しながら持続可能な社会を実現することの重要性を認識していただきたいと思います。

 近年情報通信技術の飛躍的進展や人工知能の開発によって高度な情報社会が出現していますが、他方においてこれまで直線的に推進されてきたグローバリズムの動きが強力な自国第一主義の台頭もあって見直しを迫られています。その背景には、無秩序なグローバリズムの進展が所得格差を産み、それに宗教理念や民族闘争が複雑に絡んでテロリズムが横行しているという現実があります。また、情報通信技術の驚異的発展によって、フェイク(虚偽)ニュースの氾濫、匿名性の投稿による人身攻撃、ネット犯罪など、人間の尊厳を毀損し、品位を貶める行為がグローバルに蔓延しています。さらに、自由原則に基づくグローバル経済が資源の最適配分を促すという理論が経済学の一般的な考え方ですが、自由貿易のあり様によっては、世界の国々や国民の均等発展を妨げることになりかねません。農業が果たしている自然環境への役割なども見極めながら、国や地域の均等発展に配慮した国際経済システムを再構築することが必要です。

 このような観点から、皆さんは、しっかりと基礎を学び、かつ自分の頭で考えることが必要です。原理原則を学んだうえで、応用力をつけ、実践力を身につけなければなりません。そのためには「学ぶ」ということを幅広く考え、机上の論理に加えてフィールドワーク等を通じて広く深い視野を育てる必要があります。本学は従来から多様な分野を学ぶために最適な環境を用意していますが、近年さらに地域振興に直接役立つ教育体系を確立しています。なお、地域を学ぶ際には、グローバルな視点を持ってローカルを考えるというグローカルな思考が必要です。本学で学んだ皆さんは、将来どのような進路に進もうとも、社会の求める優れた人材になっている筈です。

 日々の学習に加えて大学祭、サークル活動、ボランティア活動、ミュージカル公演などにも積極的に取り組んでください。目的に向かって仲間とともに協力し達成感を味わうことは学生生活を豊かにし、将来に向かってさらなる成長力を養うことになるでしょう。

 本学は地元深川市から大きなご支援をいただいていますが、深川市をはじめ近隣の自治体や住民の方々が学生に寄せてくださる眼差しは暖かく、この風光明媚な地に居を定めている幸せを強く感じています。本学は地域の行政やさまざまな団体と日常的に交流しており、地域振興に関わる企画にも加わっています。新入生の皆さんも交流の輪に入り、ときには企画を推進する者のひとりとなって、地域の方々から愛される拓大生になってください。

 大学生活においては、ときには苦しいことや悩むことがあるでしょう。何でも相談できる友人や先輩を多く持つことが大切ですが、私たち教職員にも遠慮なく相談してください。

 今日からいよいよ大学生です。健康に十分留意して悔いのない学生生活を送ることを祈念しつつ、新入生への歓迎の辞といたします。

令和2年4月10日

拓殖大学北海道短期大学
学長 篠塚  徹