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令和元年度 卒業に当たって 学長告辞 | 拓殖大学北海道短期大学

令和元年度 卒業に当たって 学長告辞

令和元年度 卒業に当たって 学長告辞

  本学は、新型コロナウィルス感染症が世界規模で流行し、収束の見通しが立っていないなかにあって、卒業式をやむを得ず中止いたしました。卒業生の健康と安全を最優先に考えた措置とはいえ、このような事態に至ったことについて卒業生ならびに保護者の皆様のご理解をお願い申し上げたしだいです。
 ここ北海道深川の地における学びに別れを告げて卒業された203名の皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。また、この晴れの日を迎えるまで常に学生を暖かく見守り、ときには力強く励ましてこられたご両親をはじめご家族の皆さまにも心からのお祝いを申し上げます。この世に生を享けて以来今日まで皆さまが慈しみ育ててこられた学生たちは、ここに心身ともに大きく成長して新たな人生に向けて踏み出そうとしています。
 卒業生の皆さんは、拓殖大学北海道短期大学に入学して以来、勉学に励むとともにサークル活動やボランティア活動などにも勤しみ、多くの得難い友人たちを見出したことと思います。その間のさまざまな体験を通して汗をかき涙を流し、喜んだり苦しんだりしながら貴重な学生生活を過ごしたあなた方は、この良き日を迎えて感慨もひとしおのことと思います。それだけに、学窓を去る日に当たって惜別の情が湧くとともに、新たな人生へ踏み出す喜びもまた大きいことと察しています。
 卒業生の皆さん、あなた方はこの広大で魅力溢れるキャンパスに別れを告げ、それぞれが選んだ道へと歩んでまいります。皆さんの前には多様な進路が開かれています。農業などの家業を継ぐ人、保育園、幼稚園、福祉施設などに就職する人、一般の企業に就職する人、拓殖大学など4年制の大学に編入学してさらに勉学を続ける人、農業技術など将来に備えて海外研修を受ける人など、多様な分野に進みます。その際には、情報通信技術の高度化、人工知能の登場、スマート農業の展開など、現代の産業界全体を覆う技術進歩にふさわしい環境や形態の下で働き、学ぶことになりますが、その中にあって最も重視されるべきは本学で培われた豊かな人間性を発揮することです。
 皆さんがどのような道を選ぶにせよ、かけがえのない青春の一時期を本学で学び過ごした経験が、これから待ち受ける起伏に富んだ人生において必ずや役に立つことでしょう。実験実習農場で育てた作物を収穫した喜び、多くの行事に参画し実践した充実感、ミュージカル公演に向けて傾けた長く苦しい日々が公演成功によって報われた喜び、スポーツ、音楽、写真撮影などに打ち込んだサークル活動を通じて学んだ努力し協調することの大切さ、二年間の学習成果を公開の場で発表した緊張感と晴れがましさなどが、あなた方の血となり肉となって人間の幅を広げ、これからの長い人生を切り開いていく大きな原動力になります。また、これらの学習や活動の過程で培った素晴らしき仲間との友情、教えを受けた教職員との絆、地域の人々との触れ合いなどは、あなた方の一生の糧になる筈です。
 志を抱いて本学に来られた留学生の皆さん、あなた方は気候風土が違い文化や風俗が異なるこの地において、懸命に学び抜き、晴れて本日の卒業式を迎えることができました。この二年間北の大地で日本人学生とともに学んだ貴重な経験は、生涯忘れえない良い思い出となるとともに、進学や就職において存分に活かしていけるでしょう。願わくは、日本の良き理解者となって末永く母国と日本の架け橋になっていただきたいと思います。
 社会人学生の皆さん、若い学生とともに学び続けて今日の良き日を迎えられたことに心からの祝意と敬意を表します。記憶力の減退や肉体の衰えを実感しながらも真摯に座学や実習に取り組むあなた方の姿は若い学生たちの見本となり、生涯学習の素晴らしさを身をもって示されました。この二年間に学んだことを活かして、今後とも心豊かで幸を歩まれることを願っています。
 日本列島においては、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本大地震などが相次いで発生しました。北海道においても、北海道南西沖地震や十勝沖地震などたびたび大きな地震が発生し、一昨年9月には胆振東部地震が発生しました。大雨による土砂災害も相次いでおり、昨年は関東甲信越地方・東北地方を襲った台風19号をはじめ、九州や中国地方も含め甚大な豪雨被害が多数発生しました。このように日本列島は自然災害から免れない状況にあり、今なお深い傷跡が残っている被災地が多くあります。改めて亡くなられた多くの御霊のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災地が一日も早く復興し、平穏な暮らしを取り戻すように切望しています。そもそも自然災害は日本に限らず、地球上のさまざまな国や地域で発生しています。また経済発展に伴い私たち人類が生み出している二酸化炭素などによって地球温暖化が進んでいる現象があり、昨年12月にマドリードで開催された第25回締約国会議(COP25)におけるパリ協定の実効化議論もはかばかしく進展しませんでした。私たちは単に学ぶだけではなく、防災や地球温暖化阻止のために各自何ができるか検討し、地球人としての行動を考えるべきではないでしょうか。
 昨年12月に中国武漢市から始まった新型コロナウィルス感染症は、中国国内はもとより国外に広がり、猛威を振るっています。私たち人類は自然の猛威に備えるだけでなく、感染症など生存を脅かす疾患にも十分備える必要があります。学びの場を通して身に着けた社会生活を営む者の基礎力を発揮して健康管理に意を用い、発症や感染を防ぐことに努めましょう。
 情報通信技術の進展や人工知能の開発によって終わりの無い情報社会が出現している今日のグローバリズムにおいては、反面自国第一主義が台頭し、自由な競争社会を標榜する資本主義社会が修正を余儀なくされています。無秩序なグローバリズムの進展は所得格差を産み、それに宗教や民族闘争が複雑に絡んでテロリズムが跋扈しています。私たちは、民族や宗教の差異を認め合い、人間の英知を結集して平和な地球を維持するための国際合意を目指さなくてはなりません。
 なお、本年7月から9月にかけて、東京オリンピック並びに東京パラリンピックが開催されます。60年ぶりに巡ってきた東京オリンピック・パラリンピックがオリンピック憲章のもとあらゆる対立を乗り越えて世界平和に貢献し、成功裡に終わることを願っています。
 創立以来53年間、本学は学校法人拓殖大学の建学精神を踏まえつつひたすら社会の発展に寄与できる人材育成のために実践教育を施してきましたが、今後はなお一層地域振興のために発信し、実践してまいります。世界や日本の政治・経済・社会の動向を踏まえつつ、地域とともに歩む本学の使命を全うします。
 卒業生の皆さん、このような状況を踏まえたうえで、在学中に学んだことを大いに咀嚼して日本のみならず世界に向けて羽ばたいてください。皆さんの母校である拓殖大学北海道短期大学は、今後も北の大地、深川市に腰を据え、あなた方を応援し続けます。嬉しいときも、悲しいときも、また困ったときも、いつでも母校に声をかけ、相談してください。皆さんが健康で活躍されることをお祈りいたします。ご卒業、本当におめでとうございます。

 令和2年3月15日

 拓殖大学北海道短期大学
学長  篠塚 徹