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海外農業研修に参加している島田君からお便りが届きました。(3月25日) | 拓殖大学北海道短期大学

海外農業研修に参加している島田君からお便りが届きました。(3月25日)

一昨年の3月に本学を卒業し、現時アメリカで農業研修中の 島田聖史 君から近況が届きましたので紹介いたします。

島田くんからのお便り

みなさんこんにちわ。島田聖史です。
私は今JAECを通じ、アメリカのワシントン州オーバーン市にて農業研修をしています。
 今年も3月に入り、気温が二桁を超える日がきました。またサマータイムにも切り替わり、春の到来を身に染みて感じています。
 私は現在、ウェアハウス(以下WH)という倉庫で働きながら、時折畑にでて、リーキの収穫や農作物の選別・洗い・箱詰めを行っています。また最近では6月に定植に向けて、リーキの播種作業が始まりました。この作業で私は土入れを行っています。発芽揃えるためセルトレイに均等に詰めなければいけないのですが、手の感覚で行うのでとても難しいと感じています。何度も土の分量を修正するように言われてしまっています。
 WHでは、基本的に農産物の出荷が主となります。また自家農場の農産物を出荷する以外にも、WHには他の機能があります。今回はその紹介とアメリカの流通についてまとめてみました。

WHの機能は下の通りです。
①出荷
②リセール:他農場がストアから返品された農産物を引き受けて、品質が劣っていても買いとるストアやそれを扱うWHに再販売(リセール)する。
③中間業者:他農場とストアの架け橋で、私たちのWHで一定量を受け取り、そこから数回に分けて中間業者として、私たちが配送していきます。
④ストレージ:他社の商品を配送予定日までストア近くである私たちWHで一旦受け取り、配送日まで保管する。
⑤販路の保持:農産物の安定出荷のロットを確保することが出来ない時期に、他の農場から農産物を買い取り、それをストアに販売しています。自家農産物を売るために類似した農産物を仕入れて、まとめて販売する。

 私が一番驚いたのは、リセールです。日本では品質がどこのお店も一定以上保たれていて、流通の現場に、規格外が流れることは少ないです。アメリカはというと、各グローサリーストア毎に品質がある程度決まっています。そのため、見た目の品質が若干劣るものを出荷することができます。現にそれらを買い取り、グレードが低いストアへの販売を専門にしているWHもあります。なので農場からすると、返品された場合に、規格外の在庫を抱えることないメリットがあります。逆に利益がゼロもしくは赤字になってしまうデメリットもあるので、品質が高いに越したことはありません。
 そんなリセール対象になる農産物にも例外はあり、出荷できないものもあります。そのため農場は在庫を一旦抱えてしまいますが、フードバンクというサービスを利用し、引き取ってもらうことが可能です。フードバンクはアメリカ国内のどこにでもあり、無料で食べ物を提供するという企業です。基本的に貧しい人やホームレスの人が利用するシステムです。そのため農場が出荷すると、農産物は廃棄されることが格段に減るような枠組みが出来上がっていました。
 販路の保持のために、私たちの農場の農産物のロットが安定できない際に、他の農場から農産物を買い取りますが、逆に他の農場のロットのために農産物を販売するという場面もありました。実際に連携している農場同士は、同じ市内ではありませんが、日本での販路を確保するためには、こういった農場間の横の連携が必要になってくるんだと再確認しました。③や④のような機能は現時点では地元農業には必要ないと考えています。しかし自分が販路を見つけた際には、中間業者として、販路の確保を狙っている零細農家から農産物を集めて、販売することが出来るのではないかとも考えています。アメリカでの研修で、実際にすぐに使えるような技術や仕組みなどありません。しかし今後のヒントになるようなことは多くあるので、今後学習を更に進めていきたいと思います。
 実際にアメリカに来てみて、日本の農業の違いは規模と市場原理と、ワーカーが大雑把なところなど、日本の方が技術が上だろうと思っていましたが、そんな大雑把な見解では図り切れてませんでした。規模はもちろん違いますが、自分が品質は日本より劣るのではないかと思ってきたのは、ほんの一部分を見ていたにすぎないために、感じてしまった間違えでした。流通システムに関しては今の、市場を通さずに直接スーパーと契約して販売する方法の最終形態がこれなんじゃないかなとも感じました。
 私は、今後農業経営をする際には、レストランや路面店への販路の獲得を視野に入れていたので、こういった流通の流れというものはとても勉強になりました。しかしながら最初の販路確保のための営業を知る必要があるので、今後はそれに向けて農場研修を進めていきたいと思います。

フォークリフトでの作業様子
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ビーツの種類
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自家農場と他農場のリーキ
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